全てのデニムジャケットの原型とされる、リーバイスの506XX、通常1st(ファースト)。
その中でも、「大戦モデル(S506XX)」という言葉に反応してしまう方は少なくないはずです。
物資統制の時代背景から生まれた“簡略化の美学”は、いま見ても色気がある。
けれど本家の復刻やヴィンテージは、価格も入手難易度も現実的ではありません。
そこで注目したいのが、ユニクロの新作「デニムトラッカージャケット(商品番号:484402)」です。

コットン100%デニム、ディテールへの言及、そしてユニクロらしい価格設定。
ユニクロが“原点”を研究しながら、現代の服として成立させた一着だと感じます。
本記事では、まず「S506XX大戦モデル」の要点を整理し、そのうえで本トラッカージャケットがどこを踏襲し、どこを現代化したのかを、個人的視点も交えレビューします。
- そもそも「S506XX(大戦モデル)」とは
- ユニクロ新作「デニムトラッカージャケット」基本情報
- 大戦モデル(S506XX)を踏襲しているディテール
- 逆に「復刻ではなく、ユニクロとして最適化」している点
- コスパをどう見るべきか:5,990円で手に入る“入口”としての価値
- 取り扱いと注意点:買って終わりにしないために
- まとめ
そもそも「S506XX(大戦モデル)」とは
506XX、そしてS506XXについては以下でまとめていますのでご参考までに。
簡単に言うと、通常の1st(TYPE I)は506XXという型番で、大戦モデルになるとS506XXという型番になります。
例えば、以下は506XXです。
一方で、以下がS506XX。
大戦モデルは1stをベースにしつつ、第二次世界大戦期の資材統制の影響で“簡略化(Simplify)”されたモデルとして語られます。
型番の頭文字のSはこのSimplifyが由来です。
さて、この大戦モデルについて、外観面で分かりやすい特徴をまとめると、概ね次の通りです。
- 胸ポケットがフラップレス:生地節約
- ボタン数が4つ:ボタン節約
- 月桂樹ボタン(ドーナツボタン):メーカ刻印ボタン⇒汎用ボタンへ
上記のように、戦時下で色々な変更が加わりましたが、この「削ぎ落とした結果としての格好良さ」が、大戦モデルの魅力です。
ユニクロ新作「デニムトラッカージャケット」基本情報
では次に、ユニクロのデニムトラッカージャケットを見ていきましょう。


公式サイトによる特徴を見ると、
- コットン100%デニムで、適度なスラブ感がある。
- 左胸にパッチポケット、さらに脇の縫い目を利用した腰ポケット(=サイドポケット系)が付く。
- 後ろ身頃にタックを入れ、適度なリラックスシルエットとして設計。
- 「原点を研究したボタンデザイン」「ステッチは2色を使い分け」と、意匠面も推している。
などとなっています。
これらを見るに、1stというデザインソースはあれど、それらの特徴に忠実に寄せるだけではなく、日常で便利なポケットや、今っぽく着られるシルエットを織り込んだものだと考えることができます。
大戦モデル(S506XX)を踏襲しているディテール
前述の通り、このアイテムは「S506XXを丸ごと復刻」ではありません。
ですが、“大戦モデルらしさ”が立ち上がる要点はしっかり拾っています。
胸ポケットがフラップレス
大戦モデルの象徴がフラップレスの胸ポケットであることは、前述の通りです。
本アイテムについてもそれを踏襲し、「左胸にパッチポケット」という説明で大戦モデルを踏襲しています。
Levi's Vintage Clothing(LVC)や国内ドメスティックブランドのレプリカの場合、フラップポケット付きのモデルが多いため、フラップレスが欲しかった人にとっては嬉しいディテールです
フラップポケットの削減が結果としてコスト削減につながっていることも、ユニクロにとってはメリットとなっているでしょう。
月桂樹モチーフのボタンで“それっぽさ”が一気に出る
月桂樹ボタン、またはドーナツボタンの採用が、大戦モデルの特徴の一つです。
本アイテムは、「原点を研究したボタンデザイン」と明記されているように、月桂樹を思わせるリース状のボタンが使われています。

さらに、購入者レビューにも「月桂樹ボタン」に言及する声があり、その狙いがしっかりと伝わっている点も興味深いです。
レプリカは数あれど、実はそのブランドオリジナルボタンが使われていたり、ドーナツボタンであったりが多く、意外と月桂樹ボタンは少ないです。
シンチバックの採用
S506XX(506XXも)は、背面にシンチバック(バックシンチ)が採用されています。
シルエット・着用感を調整するための仕様ですが、やはり使いにくさがあるせいか、2nd(507XX)以降では廃止されました。
そして2nd以降採用されたサイドアジャスターは、現代のデニムジャケットの代表的な仕様となってきています。
そういった背景もあり、1stのレプリカ=シンチバックというのはほぼほぼ確実に採用されている要素であり、この点も本アイテムはしっかり抑えています。

この特徴的なディテールを採用しながらアイテム自体の価格を抑えている点は評価すべき点だと思います。
逆に「復刻ではなく、ユニクロとして最適化」している点
本アイテムは大戦モデルをそのまま“資料”としてなぞっている点もあれば、独自にユニクロらしさを採用している点もあります。
ここがこの商品の上手いところで、その代表が次の3点です。
腰ポケット(サイドポケット)の採用
本アイテムは、脇の縫い目を利用した腰ポケットが採用されています。

当然、1stはおろか、2ndでさえも採用されていないディテールであり、この点については賛否が分かれるかと思います。
しかし、この点は個人的には良い仕様だと考えています。
というのも、私自身1st/2ndのレプリカは何点か持っていますが、やはりポケットが無いのはかなり不便です。
もちろん、LVCのように「とにかく忠実に当時を再現したい」という目的であれば無い方が良いのですが、本アイテムはあくまでユニクロのアイテム。
使い勝手の良さを最優先されており、これはユーザーのニーズに合致しているのではないでしょうか。
ボタン数が5
S506XXは「4つボタン」が特徴として語られます。
一方、本アイテムは5つボタンとなっています。
これも「腰ポケットの採用」と同じく、"復刻の厳密さより、現代的なアイテムとしての使いやすさ”に寄せた発想が読み取れます。
ボタンが多い=ボタンの間隔が狭い方が、インナーとのレイヤード・インナーの見え方のバランスを調整しやすいです。
大戦仕様を真似て4つボタン採用もアリだったかと思いますが、やはりこの点は現代的な見た目を重視したユニクロらしさが光るというべきでしょうか。
2色ステッチの使い分け
リーバイスのアイテムは単色のイエローステッチであったり、オレンジ・イエローが混じった通称”レインボーステッチ”などがあります。
大戦モデルと言えば単色ステッチですが、ユニクロは本アイテムのこだわりとして、「ステッチは2色を使い分け、細部までこだわったつくり」と明記しています。
ヴィンテージのレプリカの場合、単色が使われることもあれば、こういったレインボーステッチが使われる場合もあります。
ユニクロはデニムにおいてもこういったレインボーステッチを使っており、このステッチを好んでいるのが見て取れます。
コスパをどう見るべきか:5,990円で手に入る“入口”としての価値
本アイテムの定価は5,990円(税込)となっています。
大前提、”1stモデルを模したデニムジャケット”と考えれば、安いというほかないでしょう。
例えばLVCからリリースされている1936年仕様のジャケットで52,800円(税込)です。
リーバイスのインラインであれば、以下のようにアンダー2万円と比較的安価です。
もちろん土俵は違います。
ただ、ここで重要なのは、ユニクロが「大戦モデルの美点(ミニマルな顔つき/象徴的ボタン/背中の意匠)」を分かりやすく抽出し、日常で成立する形に落としたことです。
大戦モデルに憧れはあるが、復刻にいきなり数万円は難しい。
そういう層にとって、このジャケットはかなり強い“入口”になり得ます。
取り扱いと注意点:買って終わりにしないために
素材はコットン100%、洗濯機可(ネット使用)、乾燥機不可という表記です。
また濃色デニムの一般的注意として、色落ち・色移りへの注意喚起も明記されています。
「気軽に着られる価格」だからこそ、白いバッグや淡色のインナー、車のシートなどは最初だけ少し慎重に扱うと安心です。
まとめ
ユニクロのデニムトラッカージャケットについて、私見を交えながらレビューしました。
オリジナルに対し、フラップレスのポケットと月桂樹モチーフのボタン、シンチバック等、大戦モデルらしさを感じるデザインは押さえています。
そのうえで、腰ポケットやレインボーステッチなど、ユニクロらしいアプローチも感じる一着です。
結果として、5,990円で買える“雰囲気の良いデニムジャケット”に着地しているのが、この新作のいちばんの価値だと思います。
数万円はくだらないレプリカを買うよりは、まずはこのデニムジャケットから始める価値は大いにあると思います。



