近年、コンバースのLGCYやVansのv196cf、アディダスのサンバと言ったローテクスニーカーが人気となっていますが、その波に乗って人気を集めているスニーカーブランドのひとつがオニツカタイガー(Onitsuka Tiger)です。
その中でもとりわけ象徴的な存在として知られるのが「MEXICO 66(メキシコ66)」。
1960年代のアスリートシューズをルーツに持ちながらも、今なお色褪せないルックスと実用性を兼ね備え、ユニセックスに愛される定番モデルとして不動の人気を誇っています。
本記事では、「メキシコ66」の歴史的背景からデザイン・履き心地・サイズ感についてレビューしていきます。
「今、どのスニーカーを買うべきか」と悩むファッション好きの方にとって、本モデルが選択肢に入るかどうか、ぜひ検討してみてください。
歴史に裏打ちされた信頼感|メキシコ66とは何か
まず押さえておきたいのが、メキシコ66の歴史的意義です。
オニツカタイガーの前身は、1949年に神戸で誕生したスポーツブランド「オニツカ株式会社」。
当初はバスケットシューズの開発から始まり、陸上競技やマラソンといった分野で名を上げていきます。
そして1966年、メキシコ五輪を控えて開発されたのが「メキシコ66」の原型。
当時のランナーのためのトレーニングシューズとして生まれ、スポーツシューズの枠を超えた美しさを持つデザインが評価されました。
さらに、現在のアシックスのルーツとしても位置付けられており、ブランドとしての深みやバックグラウンドを感じさせるモデルでもあります。
ただのレトロシューズではなく、日本のスポーツとファッションが交差する場所に立つスニーカー。
それがメキシコ66なのです。
デザインレビュー
早速外観レビューに移ります。
メキシコ66のデザインは、一見すると非常にシンプル。
しかし、その中に機能性と視覚的美しさを両立させる巧みな工夫が随所に凝らされています。


トップ(アッパー)から見ると、デザイン・そして今回私が選んだカラーも相まって、非常にシンプルな印象です。
ブラックのジャーマントレーナーのようにすら見えます。
しかしサイドを走るオニツカストライプは、スポーツシューズとしてのアイデンティティを象徴する重要な要素。
単なる装飾ではなく、補強パーツとしての意味合いも持ち、視覚的アクセントと機能性を両立させています。
アッパー全体はシボレザー、ストライプ箇所はスムースレザーです。
また、カラーリングによって印象が大きく変わるのもこのストライプの面白さです。
定番のホワイト×ブルー×レッドはスポーティで明るい印象ですが、こういったブラックベースのようなダークトーンを選ぶと、落ち着いたモードな印象に変化します。

アッパーは上質なレザーを中心に構成され、つま先やかかとにはスエードが施されています。
この異素材使いが、クラシックな表情に奥行きを与え、スポーツシューズの外観でありながら、「高級感ある仕上がり」を実現しています。
同色の異素材切り替え、個人的にかなり好きなポイントです。

そしてこのモデルを象徴するのがヒール(かかと部分)のデザイン。
この箇所に施されたX型のステッチは、単なる装飾ではなく実用性と意匠性を兼ね備えたディテールです。
元々このステッチは、1960年代のトレーニングシューズに見られた補強構造を踏襲したもので、着脱や歩行時に負荷がかかりやすいかかと部分の強度を高める目的があります。
同時に、当時のヴィンテージランニングシューズの意匠を再現したデザインでもあり、現在ではメキシコ66を象徴する特徴的なアクセントとして、視認性とブランドらしさを演出しています。

インソールに関しては可もなく不可もなく、といった印象。
サイズ感についての項で詳細をレビューします。

メキシコ66のアウトソールにある四角い切り込みは、地面との接地面積を最適化し、グリップ力を高めるための意匠です。
特にランニングやトレーニング用途にルーツを持つモデルであることから、当時は舗装路だけでなく土や芝の上でも安定した走行性能が求められていました。
この切り込みパターンは、そうした路面環境に対応するため、滑りにくく、足の屈曲にも柔軟に追従する構造となっています。
また、ソール全体の硬さを適度に分散し、着地時の衝撃を吸収しやすくする効果もあります。
現在では、レトロな雰囲気を演出するデザインとしても機能し、ヴィンテージ感と実用性を両立した意匠として受け継がれています。

総じて、メキシコ66の全体像を形づくるのは、「薄く、低く、すっきりとしたフォルム」です。
昨今のスニーカーに多い「ボリューム感」とは真逆のアプローチで、まるで革靴のようにスマートなシルエットが特徴です。
個人的にハイテクスニーカーよりこういったローテクスニーカーの方がパンツとの相性も良いと思っています。
パンツの裾を被せても見せてもサマになるという点は、ファッションアイテムとして大きな魅力と言えるでしょう。
サイズ感とフィット
サイズ選びにおいて、メキシコ66は「いつものサイズでちょうど良い」or「若干タイト」と感じる方が大半だと言われています。
理由は、素材の薄さと構造のシンプルさにあります。
たとえばナイキのスニーカー、例えば定番人気のダンクやエアフォース1、エアジョーダンシリーズなど─は、アッパーのレザーが硬かったり、履き口が狭く、内部の構造がややタイトな設計であることが多く、ハーフサイズアップを選ぶ人も少なくありません。
それに対して、メキシコ66はアッパー素材が柔らかく、全体的に薄く構成されているため、足に自然と沿うようなフィット感があります。
素材の柔軟性と構造のミニマルさゆえに、普段のスニーカーサイズで問題なく履けるケースがほとんどです。
ただし、横幅は注意が必要です。

上記画像(アウトソール)から分かるように、足の裏中心部分(土踏まずの箇所)あたりがかなり狭く設計されています。
このように、内部は狭めの設計となっているため、多くの人が「良いフィット感」と感じる一方で、足幅が広い方や甲高の方にとっては窮屈に感じられることもあります。
そういった方には0.5cmサイズアップを視野に入れるのもおすすめです。
ただし、レザーやスエードのモデルであれば履き込むうちに素材が馴染んで足にフィットしてくるため、初回のタイトさは徐々に軽減される傾向にあるそうです。
ちなみに私は普段27cmで、スニーカーによってはサイズアップ・ダウンしますが、こちらは27cmを選定しました。
土踏まず箇所の狭さは感じますが、個人的にはその狭さが履き心地の良さに繋がっているように感じています。
履き心地|軽快で“素足に近い”感覚
メキシコ66はそのミニマルな設計ゆえ、インソールも厚みは薄く、クッション性はあくまで控えめ。
厚底スニーカーのような反発力や沈み込みは期待できません。
「長時間履いても疲れない」「クッション性抜群」といったスニーカーが欲しいのあれば、やはりその点はハイテクスニーカーに軍配が上がります。
その代わり、地面との距離が近く、足の動きにダイレクトに反応する軽やかさが魅力です。
当然、軽さも感じます。
この「素足感覚」に近い着用感こそ、スポーツシューズとしての設計が活かされている部分であり、普段履きとしても足取りが軽く、歩いていて気持ちが良いと感じさせてくれます。
価格帯と入手性|高すぎず、ちょうど良い“良品”
定価はモデルや素材によって異なりますが、一般的には15,400円(税込)が定価だと思います。
このクオリティ、デザイン性、ブランド背景を考えれば、決して高くはありません。
むしろ、昨今のあらゆるアイテムの値上げを考えれば、ファッションスニーカーとしては良心的な価格帯と言えるでしょう。
また、グローバル展開しているブランドゆえに、オニツカタイガーの直営店・オンラインストアはもちろん、セレクトショップや百貨店でも購入可能です。
最近ではその人気ゆえにカラーやサイズによっては人気で在庫切れになることもありますが、高額な転売対象になるほどではないので、比較的入手しやすい部類です。
まとめ
メキシコ66は、トレンドを追いかけすぎない人にこそおすすめしたいスニーカーです。
そのデザインは一見シンプルですが、細部にはしっかりとした物語と設計思想が宿っています。
過度な主張をしない、でも確実にセンスを感じさせる、そんなスニーカーは、探すとなかなか見つからないものです。
クラシックな佇まいの中に、モダンな感覚が息づくメキシコ66。
「今どき」ではなく、「これからも履きたい」と思わせてくれるスニーカーとして、ファッション好きなら一度は手に取ってみる価値がある一足だと感じます。



