革靴というジャンルの中でも、オンからオフまで幅広く活躍するのがローファーです。
靴紐がなく着脱が容易でありながら、カジュアルすぎず上品さを演出できるため、一足は持っておきたい定番アイテムと言えるでしょう。
昨今ではスニーカーローファーなるジャンルの靴も大人気となってきており、しばらくこのローファーというアイテムの熱は続きそうです。
とはいえ、今回紹介するのは革靴でのローファーです。
革靴と言えばそれこそ昔はある程度のお金を出さないと納得のいくものは手に入れられませんでしたが、近年は価格帯やデザインの選択肢が広がっています。
例えば、Harutaのように数千円~1万円台で購入できる入門モデルから、J.M. WestonやAldenのように10万円を超える“一生もの”まで、その幅は非常に広大。
どれを選べばよいか迷う方も多いはずです。
そこで本記事では、価格帯別に代表的なブランドとモデルを整理し、それぞれの特徴や魅力を徹底解説していきます。
低価格帯(概ね3万円以下)
Haruta(ハルタ)

1917年創業の日本ブランドで、学生靴の代名詞として長年親しまれてきました。
1950年代に紳士・婦人向けローファーを発売し、日本にこのスタイルを広めた立役者です。
代表作「6550」は合成皮革ながら1万円以下で購入でき、雨や汚れに強いため普段使いはもちろん、サブ用途としても最適。
本革であれば「906」もおすすめで、それでも1万円台。
大量生産による安定した品質と価格を超える信頼性を兼ね備え、革靴に不慣れな人にも安心して選ばれるのが大きな魅力。
学生時代の思い出をそのまま“大人の定番靴”として履ける存在であり、世代を超えて支持される日本ローファー文化の象徴といえるでしょう。
REGAL(リーガル)

100年以上の歴史を持つ日本を代表する老舗ブランドで、国産ローファーの代名詞的存在です。
中でも定番人気の「2177」は、グッドイヤーウェルト製法を採用し、堅牢さと修理可能な構造を備えた“一生履ける靴”として知られています。
価格は3万円前後で、全国に整備された修理体制により、ソール交換などを行いながら長く愛用できるのも魅力です。
丸みを帯びた普遍的なシルエットは世代を問わず受け入れられ、学生から社会人まで幅広い層に支持されています。
Kenford(ケンフォード)

1986年にREGALの弟ブランドとして誕生したケンフォードは、価格は控えめながら、REGAL譲りの木型や設計を採用している点で高い信頼を得ています。
大定番「KP13」は、頑丈な作りと快適な履き心地を両立させた一足で、本革ながら1万円台というコスパも大きな魅力。
耐久性に優れているため、毎日履き続けても安心でき、コストパフォーマンスを重視する層から厚い支持を集めています。
初めて本格的な革靴に挑戦する人にとっても安心感があり、REGALの品質をより低価格で体験できるブランドとして高い評価を確立しています。
昨今ではセレクトショップ別注で非常にデザイン性の高いローファーもリリースされており、「良い意味で値段に見合わない」、個人的には非常におすすめのブランドです。
中価格帯(4~10万円前後)
Jalan Sriwijaya(ジャランスリワヤ)

インドネシア・バンドンに拠点を置く老舗靴工場「Fortuna Shoes(フォルトゥナシューズ)」によって製造されるブランドです。
2000 年代初頭、日本のセレクトショップ向けに自社ブランド「Jalan Sriwijaya」として展開を開始。
最大の特徴は、ハンドウェルテッド・グッドイヤー製法(ハンドソーンウェルテッド)を採用していながら、3〜4万円台という価格帯を実現している点にあります。
これは、インドネシア国内の自社一貫体制と熟練職人による手縫い工程によって可能になったものです。
代表的モデルとして、日本市場で人気が高いのが 「98589」。
セレクトショップ(BEAMS、EDIFICE など)を通じて販売されており、クラシックなシルエットと柔らかな履き心地が評価されています。
アッパーには主にフランス・デュプイ社やイギリス・アノネイ社の高品質カーフを使用。
個人的に、革質や見た目の造りからはアンダー5万円には見えないほどのクオリティだと感じています。
コストパフォーマンスに優れた「本格靴の登竜門」として、日本の靴愛好家の間で高い評価を得ています。
G.H. Bass(ジーエイチ・バス)

1876年にアメリカ・メイン州ウィルトン(Wilton, Maine)で George Henry Bass によって創業された老舗シューズブランドです。
1936年、世界初のローファー型靴として知られる 「Weejuns(ウィージャンズ)」 を発表。
この「Weejuns」こそが、後に「ペニーローファー」の原型となったモデルとして広く知られています。
現行ラインでは、「Larson」 が最も代表的なモデル。
これは1936年当時のデザインを踏襲し、クラシックなラウンドトゥと、サドル中央のスリットを持つ伝統的なペニーローファー仕様が特徴です。
現在は米国ブランドとして存続しつつ、製造は主に中南米(ドミニカ共和国など)の工場で行われており、価格帯は日本国内で4万円前後が一般的です。
正規輸入代理店を通じて国内セレクトショップや百貨店でも展開されています。
SEBAGO(セバゴ)

1946年、アメリカ・メイン州で Daniel Wellehan らによって創業されたブランド。
ブランド名は地元のセバゴ湖に由来します。
創業当初からモカシン構造を得意とし、手縫いによる柔軟な履き心地で知られてきました。
代表モデル 「Classic Dan(クラシック・ダン)」 は、1940年代後半から続くペニーローファースタイルを継承する一足。
サドル中央にスリットを備えたクラシックなデザインで、アッパーにはフルグレインレザーを採用。
ハンドソーン・モカシン製法により、足馴染みと耐久性を両立しています。
日本国内ではBEAMSなどで4~5万円台で展開されています。
デッキシューズ「Docksides」と並び、ブランドを象徴する定番ラインとして位置づけられています。
Joseph Cheaney(ジョセフ チーニー)

1886年にイギリス・ノーサンプトン州デスバラで創業したシューメーカーで、現在も自社工場で設計から仕上げまで全工程を一貫して行っています。
2009年には、元Church’s経営者であるジョナサン&ウィリアム・チャーチ兄弟がブランドを買収し、独立系メーカーとして再出発しました。
代表的なローファーは 「Hudson(ハドソン)」 と 「Cambridge(ケンブリッジ)」。
ハドソンはラウンドトゥのクラシックなペニーローファー、ケンブリッジはスリムなラストを用いたややシャープな印象のモデルです。
どちらもGoodyear Welted製法、もちろん英国製。
価格は日本の正規代理店「BRITISH MADE」などで取り扱いがあり、ハドソンでおよそ9万円台。
すべて英国国内で生産される本格仕様であり、同価格帯の中では高い品質管理を特徴としています。
Jacques Soloviere(ジャック・ソロヴィエール)

2014年にパリで誕生した新鋭ブランドで、クラシックな靴を現代的に再解釈するアプローチで注目を集めています。
デザイナーの Alexandre Rousseau による「クラシックと現代性の融合」をテーマに、
イタリア職人のハンドメイドで仕立てるミニマルなレザーシューズを展開しています。
代表作は、「ALEXIS」シリーズ。
ブランドの初期デザイン哲学を受け継いだ一枚革構造(ワンピースヴァンプ)のローファーで、ボリュームのあるラバーソールを組み合わせ、軽さと耐久性を両立しています。
アッパーには柔らかく上質なカーフやスエードを採用し、Blake製法によるしなやかな履き心地が特徴。
ブラックやベージュなど、洗練されたトーン展開で、トラッドにもモードにも自然に馴染みます。
日本国内ではBIOTOPやEditionなどで取り扱いがあり、価格は7〜9万円前後です。
Paraboot(パラブーツ)

1908年、フランス東部イゾーにてレミー・リシャール・ポンヴェールによって創業されたシューズブランドです。
登山靴・ワークブーツ・ドレスシューズを手がける総合靴メーカーとして発展し、現在もフランス国内で自社一貫生産を行う希少な存在で、日本でもその知名度は高いです。
代表作のひとつ 「REIMS(ランス)」 は、パラブーツのラインナップの中でも特に人気の高いコインローファー。
ノルウェージャンウェルト製法によって構築されており、アッパーとソールを堅牢に縫い合わせた構造が防水性・安定性を両立しています。
本モデルの特徴は、何といっても他のスマートなシルエットとは一線を画すボリュームのあるラストと厚みのあるアウトソール。
ワークシューズの要素を感じさせるタフな外観でありながら、トラッドなコインローファーの品格を保っている点が魅力的です。
価格は日本国内の正規店で 約9万円程。
「ローファーは気になるけど、あの革靴感強めの綺麗目なシルエットが苦手」といった人にはこのランスが良いと思います。
forme(フォルメ)

日本の靴職人である南隼人(みなみ はやと) 氏によって2010年代初頭に立ち上げられたレザーブランド。
デザイナー自らが木型設計から携わり、国内の熟練職人が製作するという徹底した体制を採っています。
クラシックを基盤にしながらも、無駄を削ぎ落としたミニマルなデザインが特徴で、立体的で美しいシルエットが際立ちます。
代表作「Loafer(fm-111)」は、繊細なコバ処理や曲線美のあるフォルムが印象的。
トラディショナルな構造ながら、シャープな木型と低めのヴァンプが日本的な上品さを演出しています。
Loaferは7万円台で、その他のアイテムも大体そのくらいの価格であり、大体中堅ラインといったところでしょうか。
クラフトマンシップと現代的感性を融合させたローファーは、トラッド靴に飽きた人やモダンな解釈を求める層にぴったりの選択肢といえるでしょう。
また、何より日本のメーカということで履き心地はとにかく良いです。
海外製のものは、当然ながら海外の方々の足に合わせて作られており、日本人の足型に合わせた木型設計には敵いません。
※もちろん例外の方もいるでしょう。
とにかく履き心地重視であればformeが一番オススメかもしれません。
高価格帯(10万円~)
Enzo Bonafé(エンツォ ボナフェ)

1963年、イタリア・ボローニャ創業の家族経営工房によるメーカです。
製法は、モデルによってHand-welted(ハンドウェルト) と Blake(ブレイク) を使い分けているようです。
代表的なモデルは「Style 645」でしょうか。
こちらは前述のうちハンドウェルト製法でラスト74945を使用。
フルレザーライニングでレザーソールとなっており、Made in Bologna(Italy)。
イタリア製の靴らしいシャープなシルエットが特徴なので、このブランドがハマる人もきっと多いのではないでしょうか。
国内では取扱店舗は少ないのですが、中でもBEAMSであれば取り扱いが多いようで、国内定価は13~15万円程です。
Crockett & Jones(クロケット&ジョーンズ)

1879年に英国ノーサンプトンで創業した名門ブランドで、世界中の靴好きを魅了してきました。
代表作「Cavendish 3(キャベンディッシュ3)」は、洗練されたシルエットと普遍的なデザインで、タッセルローファーの代名詞とも言える存在です。
ラスト(木型)には英国靴特有の立体的フォルムをもつ「375」を使用。
アッパーは上質なカーフレザーまたはスエードで、ヒールカップや甲部分のフィット感を重視した設計となっています。
価格は日本国内正規代理店「FANS.(フリークスストア運営)」や「BRITISH MADE」で 13万円前後。
堅牢性と上品なデザインの両立により、ビジネス・ドレス両用途で評価されています。
現在も英国ノーサンプトン工場で生産される、伝統的な英国ローファーの代表格です。
セレクトショップのスタッフからの人気も高い、ファッション好きに好まれる一足です。
J.M. Weston(ジェイエム・ウェストン)

1891年にフランス・リモージュで創業した高級靴ブランドです。
現在もリモージュの自社工場で生産を続けており、素材選定から製造までを一貫して行う数少ないメゾンのひとつです。
ブランドを象徴するのが、「#180 Signature Loafer」。
1946年に誕生したこのモデルは、180の製造工程を経て完成すると言われています。
グッドイヤーウェルト製法による堅牢な構造と、控えめながら品格あるデザインで知られ、フレンチローファーの代名詞的存在とされています。
トラッドやビジネススタイルはもちろん、カジュアルにも合わせられるフランス靴の象徴的モデルとして、世界中で人気とされています。
国内定価は15万円前後と値段は張ります。
それでも「ローファーといえば」で挙げられる代表的なモデルがこの#180であり、いつの時代もファッション好きな人々の中で強く支持されている一足です。
Alden(オールデン)

1884年にアメリカ・マサチューセッツ州ミドルボロウで Charles H. Alden(チャールズ・H・オールデン) により創業された老舗シューメーカー。
創業以来、米国東海岸の伝統的な靴作りを継承しながら、現在も同地で生産を続けています。
オールデンと言えばタッセルローファーであり、例えばブラックの「#664」やバーガンディの「#563」はその代表ともいえるモデルでしょう。
国内での価格は概ね20万円前後と一際高額となりますが、それでも売れてしまうのがオールデンの恐ろしいところ。
世界的タンナーであるHorween(ホーウィン)社製のシェルコードバンを採用し、履き始めは硬いものの、履き込むほどに唯一無二の艶と柔らかさが生まれます。
その変化は“靴を育てる楽しみ”と表現され、世界中の愛好家から熱烈な支持を受けています。
価格はとにかく高額ながら、経年変化の美しさと修理を繰り返し長く使える構造により“一生もの”として選ばれる存在の代表格です。
日本でもとにかくオールデン人気は高く、「いつかはオールデン」と憧れている方もきっと多いはず。
まとめ
ローファー選びは、価格やブランドの格だけでなく「自分がどう履きたいか」で決めるのが最も賢明です。
初めて挑戦するなら、HarutaやKenfordのような手軽で実用的なモデルから始めると失敗してもダメージは少ないですし、ローファーのサイズ感であったり履きこなしが身につくのではないでしょうか。
あるいは、少しだけ予算を増やしてJalan SriwijayaやG.H.Bassなどの、「品質と価格のバランスが良い」ブランドの選択も当然アリです。
革質・造りが良い靴は育てる楽しみも出てきます。
フィット感優先なら、やはり日本人の足向けに作られたformeが良いでしょう。
試着も含めれば私自身多くのローファーを履いてきましたが、初めてformeを履いた時の抜群の履き心地は今でも忘れません。
長い付き合いで一生ものを探すなら、やっぱりAldenやJ.M. Westonといった王道の名品が強力な候補になります。
とにかく高いのがネックですが、「その値段でも売れていて支持されている」ことが納得できるほど、その存在感とクオリティは圧倒的です。
大切なのは「自分のライフスタイルに寄り添えるかどうか」なので、予算や自分が何を重視するかでベストな一足を見つけてみてはいかがでしょうか。



