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Levi’s 506XX(Type I)完全ガイド|誕生から年代別ディテール、S506XX“大戦モデル”への派生

究極のヴィンテージ・デニムとして、世界中のコレクターが追い求める至高の一着「Levi's 506XX」。

通称「ファースト(1st)」と呼ばれるこのジャケットは、現代のあらゆるデニムジャケットの原点であり、その完成されたデザインは100年以上経った今もなお、メンズファッションの頂点に君臨しています。

短丈で箱型、フロントプリーツ、背面シンチバック——。

この“骨格”が、その後のデニムジャケット史を決定づけました。

昨今のGジャンと呼ばれるジャンルにおいて、そのデザインは多種多様なれど、基本的にはこの1stが派生した形であることは言うでもありません。

公式の復刻ラインであるLevi's Vintage Clothing(LVC)が今もこの1stを製作しているのは、単なる懐古ではなく、506XXの完成度が今なお実用品として成立しているからです。 

本記事では、506XXの歴史と、年代別(主に仕様変更点)でのデザイン差、そして戦時下に生まれたS506XX(大戦モデル)への派生を、簡単にではありますがまとめていきます。

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506XXがType I(ファースト)と呼ばれる理由

冒頭で述べた通り、Levi’s 506XXは、いわゆるデニムジャケット史における「原点」とされるモデルです。

誕生は1905年頃とされ、1900年代初頭には現代のGジャンに近いプロトタイプが存在していたと言われています。

では、なぜ506XXは「ファースト(Type I)」と呼ばれるのでしょうか。

結論から言うと、後に登場する507XX(Type II/セカンド)や557/70505系(Type III/サード)へと続く“リーバイスのデニムジャケット”の中で、最初に定番化した基本形が506XXだからです。

ここで注意したいのが、「Type I」という呼び名は当時の正式名称というより、後年になって歴代モデルを整理するために付けられた分類名だという点です。

当時のカタログや資料を辿ると、初期は「ブラウス(blouse)」と呼ばれることが多く、作業着としての性格が強い名称でした。

さらに1938年頃のカタログで “jacket” 表記が見られるようになった、とされています。

つまり、呼称の変遷自体が、ワークウェアから“ジャケット”へと社会的役割が広がっていった流れを映しているのです。

この506XXの基本的なデザインの特徴としては、

  • フロントプリーツ: 前立ての左右に施されたプリーツは、激しい動きにも対応できるよう可動域を広げるための工夫です。
  • 左胸のシングルポケット: 506XX最大の特徴は、左胸のみに配置されたパッチポケットです。
  • シンチバック(バックルバック): 腰部分のサイズを調整するためのストラップが背面に備わっています。 

などが挙げられます。

506XXは、1952年頃に「507XX(セカンド)」が登場するまで生産され続けた、リーバイスの歴史上最も息の長いジャケットの一つです。

506XX “年代別”デザインの違い|見分けの軸は4つ

506XXの年代別の外観差を理解するうえで、まず押さえるべき軸は以下です。

  • 胸ポケット:フラップ有無
  • フロントボタン数(4か5か)
  • 背面シンチバックの金具(銀色/ブロンズ、形式の違い)
  • レッドタブ(有無、片面表記など)

この4点を追うだけで、一見似たような外観であるファーストの見分けがある程度つくようになってきます。 

1905年頃:初期506XX|“フラップなし”がスタート地点

初期のType I(506XX)は、胸ポケットが1つで、かつフラップが無い個体が存在したといわれています。

加えて、1936年の象徴的仕様(後述)が確立する以前は、Big “E”のレッドタブ自体が付いていないとされます。

ここも年代判別の重要ポイントです。 

とはいえ、古着屋でもこのレベルの個体を見られることはほとんどないでしょう。

1928年:ポケットフラップの導入|“ワーク感”の決定打

ファーストの特徴の一つである胸ポケットのフラップは、1928年に導入されたと言われています。

ワークウェアとして中身を落としにくくする目的のフラップ導入でしたが、その合理性がそのまま“顔つき”を変えた転換点になりました。 

ここから先、ファーストは「フラップ付きが当たり前」に見えがちですが、戦時期には再び“フラップなし”へ揺り戻しが起きます。

これがS506XXへつながります。

1936年:レッドタブ誕生|“ファーストの完成形”が固定される

1936年は、506XXを語るうえで特別な年です。

この年、他社ブランドとの差別化を図るために、右胸ポケットの横に「RED TAB(赤タブ)」が初めて導入されました。

また、当初は片面表記(片側だけに“LEVI’S”が入る)だったとされます。 

つまり1936年以降の506XXは赤タブ無し、それ以降1950年代初頭までが片面タブとなります。

外観上「ファーストらしさ」が最も分かりやすく揃う時代ですね。

ここで、506XXの個性を象徴するパーツである背面のバックルについてですが、

  • 1930年代まで: 針を通して固定する「針抜きバックル(シンチ)」。バックルに「SOLIDE」などの刻印があるものが見られます。
  • 1940年代以降: 滑り止めの付いた「スライド式バックル」へと移行します。これは、針による家具や車のシートへの傷つきを防ぐための改良でもありました。

といったような変遷をたどります。

Levi's Vintage Clothingのレギュラーアイテムでは、この1936モデルのみがリリースされています。

後述しますが、他の年代のモデルは入手困難となっています。

1942〜46年:戦時下の“簡略化”がS506XXを生む

506XXの歴史を語る上で欠かせないのが、1942年〜1946年頃まで生産された「S506XX」です。

頭文字の「S」はSimplified(簡素化)を意味します。

第2次世界大戦中、アメリカ政府による物資統制(WPB:戦時生産委員会)が敷かれ、衣料品にも「金属や布の使用制限」が課せられました。

これにより、506XXは変則的な仕様変更を余儀なくされます。

この時期の象徴的変化が、いわゆる大戦モデル(War Model)です。

外観上の差としては、

  • 胸ポケット:生地節約のためフラップ省略(フラップレス
  • フロントボタン:1つ減って4つに
  • ボタン:リーバイスオリジナルの刻印ボタンが不足し、月桂樹ボタンやドーナツボタン等が採用
  • 背面:針刺し式バックストラップ(簡素なバックル

といった点が挙げられます。

ここで重要なのは、S506XXがデザイン上の遊びではなく、統制下での合理の産物だという点です。

だからこそ無駄がなく、結果的に「削ぎ落とされた美しさ」として現在の目にも強く映ります。

このS506XXは、当時の「不完全さ」が現代では唯一無二の魅力として評価されており、ヴィンテージ市場では通常の506XXを凌ぐ価格で取引されることも珍しくありません。

LVCでも1944モデルが度々抽選販売されていますが、やはりその人気はすさまじく、定価が5万円程ですが、二次流通では10万円を超えることも珍しくありません。

1947年:フラップの復帰|“戦後の平常運転”へ

戦時の簡略化で省かれたポケットフラップは、戦後の1947年に再導入されました。

戦時のS506XXが“短命で希少”とされる背景には、こうした仕様の揺り戻しがあるわけです。

現代のレプリカにおいて、この大戦後のフラップ付きのモデルを踏襲したデザインも多くリリースされています。

1953年:507XX(Type II)へ|ファーストが“歴史”になる瞬間

そして1953年、後継モデルとして507XX(Type II)が登場します。

通称セカンドですね。

このタイミングで、ファースト(506XX)は“現行ワークウェア”から“定番の原点”へ立ち位置を変え、以後は復刻やアーカイブとして語られていくことになります。

506XXのサイズ展開と「Tバック」

余談ですが、506XXには、サイズ46以上の大きな個体にのみ見られる特殊なディテールが存在します。

それが通称「T-Back(Tバック)」です。

当時の織機の幅では、大きなサイズの背面のパーツを一枚で取ることができなかったため、背中の中心で2枚の生地を縫い合わせる必要がありました。

その縫い目が「T」の字に見えることから、コレクターの間でそう呼ばれています。

現代のオーバーサイズ需要も相まって、T-back仕様の506XXは世界中で激しい争奪戦が繰り広げられています。

また、昨今のレプリカ、LVCやセレクトショップ別注のリーバイスのデニムジャケット、あるいはドメブラのアイテムにおいても、こういった「特定のサイズ以上のTバック仕様」というのは踏襲されており、やはり人気を博しています。

506XX/S506XXのレプリカをリリースしているブランド例

以下では、1st(大戦モデル含む)をリリースしているブランドを一例にはなりますが挙げていきます。

Levi's Vintage Clothing

すでにご紹介した通りですが、1936仕様のモデルをリジッドでリリースしているので、一から育てることができます。

COMOLI

コモリでは、「デニムジャケット」という名称でこの1stタイプが定番アイテムとなっています。

インディゴの他、ブラックを展開しているのも特徴で、大戦仕様です。

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CIOTA

スビンコットンで有名&デニムにも定評のあるシオタも、当然デニムジャケットはリリースしています。

基本的にフラップポケット付きのようですね。

orSlow

ワーク・ミリタリーに定評のあるオアスロウ。

デニムジャケットのクオリティも相当に高く、ワンウォッシュ・加工仕様ともに人気です。

A.PRESSE

大人気ドメブラ、アプレッセも1stタイプのデニムジャケットは定番アイテムです。

このブランドのデニムも相当に良いですが、値段はやや高め。

大戦仕様であることもポイント。

SUGAR CANE

コスパで選ぶならシュガーケンも悪くないですね。

3万円台で買えるとなるとラフにガンガン着まわせそうです。

まとめ

506XX(Type I)の変遷を簡単にまとめました。

もちろん、更に細かく見れば色々な仕様の派生があるかとは思いますが、やはり大別するポイントは以下です。

  • フラップあり/なし、ボタンが4つ/5つで「戦前・戦後・戦時」の空気感が変わる
  • レッドタブの有無・片面表記は“1936以降らしさ”の鍵
  • S506XXは戦時統制の産物で、簡略化の背景まで含めて魅力になる

 実際には、オリジナルの1stに触れることができる人は極少数でしょうし、LVCを始めとしたレプリカを購入する方が大多数かと思います。

ただしレプリカとはいえ、ブランド・メーカによって上記の仕様は異なるので、こういった知識を持っておくと選ぶ際の楽しみも増えるのではないでしょうか。

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