革靴の世界において、各国に「定番」と呼ばれるメーカの存在があります。
イギリスのJohn Lobb(ジョンロブ)、アメリカのAlden(オールデン)、そしてフランスのJ.M. WESTON(ジェイエムウエストン)。
このように、各国に代表的なシューメーカがありますが、今回取り上げるのはJ.M.Westonです。
当該メーカについて代表的なモデルはいくつかありますが、本記事では「シグネチャーローファー #180」にフォーカスし、このフレンチローファーの魅力をあらためて掘り下げるとともに、特にサイズ感に重点を置いたレビューをしたいと思います。
そもそも海外メーカのシューズ自体、サイズ選びが簡単ではありませんが、その中でも難しいとされるのがこのJ.M.Westonだと思っています。
私自身、約10年ほど前にゴルフとこの#180を両方持っていたものの、サイズ選びに失敗したこともあり、数年で手放しました。
そして今回、その苦い経験を経て、久しぶりに#180の購入に至りました。
本記事では、足囲(ウィズ)の違いや、「修行」とも揶揄されるサイズ選びの是非、そしてこれらについて自身の体験談を交え、まとめていきたいと思います。
余談ですが、革靴タイプのローファーが苦手だという人には以下スニーカーローファーが大変おすすめです。
フランス靴の粋、J.M. WESTON
まずはJ.M. WESTONのおさらいから。
J.M. WESTONは1891年創業の老舗フレンチシューメーカで、木型設計から製法、レザーの鞣しまで自社で一貫して行う稀有なブランドです。
中でも「シグニチャーローファー #180 」は、1950年代に誕生して以来、同社の象徴として位置づけられています。
最大の特徴は、ローファーでありながら構築的なフォルムと強い存在感を備えている点。
直線的に張り出したコバ、丸みを帯びたラウンドトゥ、控えめながら存在感のあるヴァンプのデザイン。
いずれも、クラシックでありながらフレンチシックな空気を醸し出しています。
パリの街中ではスーツに合わせるビジネスマンはもちろん、学生の制服スタイルにも合わせて履かれているそうで、まさに「国民的ローファー」と呼べる一足。
日本では高価格帯ゆえにハードルは高いものの、セレクトショップの店員、レザーシューズ愛好家といった感度の高い方々の間では根強い支持を集めています。

職人靴でありながら“工業製品”的な精度
180ローファーはグッドイヤーウェルト製法で作られており、ソール交換も可能な設計です。
コルクフィラーの密度が高く、履き始めはやや硬さを感じるものの、履き込むごとに足の形に沈み込み、極上のフィット感が得られる点が魅力です。
一方で、この沈み込み、そして革の伸びが経年で発生することが、購入時のサイズ選定を難しくしている要因となっています。


サイズ選びで迷わないために|ウィズとフィッティングの基本
さて、ここからが本題です。
このローファーを選ぶうえで最も難しく、かつ重要なのがサイズ選びです。
なぜなら、同ブランドでは足囲(ウィズ)をA〜Fの6段階で展開しており、足長×足囲の組み合わせによって数十通りのサイズが存在します。
ただでさえサイズ選びが難しいローファーですが、このウィズのせいで(おかげで)#180は一層難易度が高くなっています。
日本人にとっての適正ウィズとは?
日本国内では、実際に流通しているサイズの多くが「C・D・Eウィズ」に集中していると言われています。
これは、日本人の足型に合いやすいゾーンがこのあたりにあること、また国内店舗における在庫の現実的な選択肢であることも関係しています。
実際、A・Bウィズは非常に細く、よほど足幅の狭い方以外には適さないと言われています。
※私はそもそもA/Bウィズの実物を見たことがありません。
逆にFウィズはかなりワイドで、よほど足幅が広い方、あるいは厚手ソックス前提でない限り、オーバーサイズとなる可能性があります。
※ただし、日本人であればこの幅広サイズが適正である方もいるそうです。
よって、初めてウエストンを購入する方は、「C・D・Eのいずれか」で試着を行うことが現実的な出発点だと個人的には考えています。
ウィズ別のフィッティング目安
- Cウィズ:非常にタイトな作り。過去には「素足感覚」で履く玄人向けの修行スタイルとして人気を博しました。
- Dウィズ:やや細めの標準設計。甲が高すぎない日本人男性の足型には比較的フィットしやすいです。
- Eウィズ:標準〜やや広め。リラックスした履き心地や、厚手ソックスでの着用を想定する方におすすめ。
上記はあくまで個人的見解です。
修行という賛否両論の価値観
かつて、J.M. WESTONのシグネチャーローファーを履くにあたり、わざと1サイズ下げたり、Cウィズを選んで「痛みに耐えながら履き慣らす」という文化がありました。
これは通称「修行」と呼ばれ、いわば男の美学のように語られてきた歴史があります。
「修業期間はまともに歩くことさえできないが、それを過ぎれば天国」という言葉を信じ、私自身もこの道を通ってきました。
しかし、この方法論は、現代においては非推奨とされる意見もかなり増えてきています。
この修行に対する否定的意見は以下のようなものがあります。
- 足への負担が大きく、外反母趾やタコ・ウオノメの原因になる
- 高温多湿な日本の気候では、蒸れやすく靴の傷みを早める
- 革の過度なストレッチは靴自体の寿命を縮める
- 足へのダメージによる精神的負担から、履く頻度が減る
早い話が、「サイズが合っていない靴を履き続けるのは、百害あって一利なし」ということです。
ローファーなので小さめを選ぶのはある種当たり前ですが、この#180に関しては、「ギリギリ履けるか履けないか」あるいは「ギリギリ歩けるかどうか」を基準にして選ぶ人が多かったレベルであり、これは到底適正サイズを選んでいるとは言えないでしょう。
J.M. WESTONのスタッフも現在では、過度なサイズダウンを明確に避けるよう案内しています。
「履いて育てる靴であっても、履けないサイズから育てる必要はない」のです。
個人的経験談
ここから、私個人の経験を書いていきたいと思います。
まず、私自身普段の靴のサイズは27cmであり、もちろんメーカ/モデルによってサイズアップ・ダウンしています。
そして、今回選んだサイズは6.5Eです。
過去に選んで失敗していたサイズは7Dでした。
フィット感はややタイトで、履き始めはやや足が疲れそうではありますが、「修行」でいわれているような「まずは短距離を数分だけ歩く」なんてことには到底ならない程度です。
もちろん、現時点では踵も浮きません。
なぜ過去にDウィズを選んでいたかと言うと、この#180を履きならしていた知人に、「#180はCウィズかDウィズを選ぶべき」とアドバイスをされていたからです。
元BEAMSバイヤーの安武氏も同様のサイズ選びをしていたようで、私はこの記事を見て、ウィズを変えて再度#180に挑戦してみようという考えに至りました。
結果として、「ローファーらしくタイトではあるものの、歩けないほど窮屈ではない」、良いサイズ選びができたと考えます。
もちろん、今後は革の伸びや沈むことも考えられ、若干フィット感も変わるかもしれませんが、その際はインソールやタンパッドで調整したいと考えています。
少なくとも、当時修業期間で感じていた、「履きたいけどあの痛みを考えるとちょっと敬遠してしまう」ような考え方にはならないので、修行サイズよりもこちらの方が大分精神的には楽だなと感じています。

まとめ
最後に、180ローファーを検討中の方に向けて、サイズ選びの要点を再度まとめます。
- ウィズはA~Fまであるが、日本人はC・D・Eが主な選択肢**
- 過去のような“修行”スタイルは現代では不要。適正サイズを選ぶことが最優先。
- サイズ感は、足長だけでなく足囲・甲高・靴下の厚さも含めて判断する
- コルクの沈みや革の伸びを前提に、ややタイトなサイズが最適
180ローファーは、本来日本人向けではないサイズ感を無理やり快適な靴に変貌させるため、修行なるものが行われてきました。
しかしながら、現代では靴に対する知識・認識の高まりや、修行経験者の知見などから、むしろ修行自体に懐疑的な意見が多くなってきました。
ローファーなのでサイズ選びが難しいのは当然ですが、「履くのがつらい・楽しくない」となってしまってはもってのほかです。
決して安い買い物ではないので、後悔のないサイズ選びが非常に重要です。



