ENNOY(エンノイ)と聞いて、現在まず思い浮かぶのは「The Ennoy Professional」のロゴが入ったTシャツやスウェット、フリース、そして通称「シャカシャカ」と呼ばれるナイロンセットアップではないでしょうか。
ENNOYについては以下記事をご参照ください。
デザインはいたってシンプル。
ゆったりとしたシルエットに控えめなロゴを入れた、日常的に着やすいウェアがENNOYの大きな魅力です。
しかし、ブランドの歩みを少し遡ってみると、現在の定番アイテムだけからは想像しにくいプロダクトも数多く存在しています。
時系列で追っていくと、既製品のボディを独自の感覚で選んでいた初期から、徐々にオリジナルボディへと移行し、さらにジャンルの異なる相手との企画を展開していくENNOYの変化が見えてきます。
今回は、そんなENNOYの歴代アイテムから、現在ではなかなか見かけない「ちょっと変わった名作」を8つ、古いものから順番に紹介します。
- TRI-MOUNTAIN製ボディのナイロンジャケット|ブランド初期
- ENNOY × is-ness
- サカナクション × ENNOY × スタイリスト私物
- 同色反転右胸刺繍Tシャツ
- 週刊文春 × ENNOY × スタイリスト私物「文春リークス」
- KPM Berlin × ENNOY × スタイリスト私物
- DAIWA PIER39 × ENNOY × スタイリスト私物 × Stefan Marx
- Netflix × ENNOY × スタイリスト私物
- まとめ
TRI-MOUNTAIN製ボディのナイロンジャケット|ブランド初期
ENNOYの初期を語るうえでもうひとつ面白いのが、TRI-MOUNTAIN(トライマウンテン)のボディを使用したナイロンジャケットです。
TRI-MOUNTAINは、アメリカで企業向けユニフォームやワークウェアなどを展開していたメーカー。
現在は廃業しており、同メーカーのジャケットは中古市場か、もしくは日本で輸入販売している店舗でのみ購入することができます。
ENNOYのアイテムでは、「Volunteer #8000」や「Conqueror #8480」が過去に使われており、防風性・耐水性を持たせたナイロンシェルにフリースライニングを組み合わせたものとなっています。
身幅やアームもかなり大きく、いかにもアメリカのユニフォームメーカーらしいボリューム感があります。
私自身もエンノイではなくオリジナルを所有していますが、裏地フリースのシンプルなブルゾンですが、やはり丈夫で気に入っています。
そしてそんなシンプルなボディに「The Ennoy Professional」の刺繍を入れる。
現在のように素材やパターンを含めてオリジナルで作り込む方法とは異なり、「世の中にすでに存在する普通の服から格好いいものを見つける」という感覚が強く表れたプロダクトです。
現在のENNOYとは少し違うブランド初期の空気を感じられるアイテムとして、アーカイブ好きならぜひ知っておきたい存在です。
ENNOY × is-ness
今ではほとんど見られませんが、過去にはドメスティックブランドであるis-ness(イズネス)とのコラボアイテムもありました。
is-nessは2001年に本格始動した日本のデザイングループ。
ファッションだけでなく、アートや音楽、テクノロジーなどを横断する活動を続けてきたブランドです。
現在のENNOYを知っている人がこのスウェットを見ても、それほど大きな違和感はないかもしれません。
ゆったりとしたシルエットに、シンプルなデザイン。
むしろ興味深いのは、ENNOYがまだ現在ほど広く知られる前の2019AWというタイミングでのコラボが行われていたことです。
中古市場に残る型番やブランド表記を見ると、この時点ですでに現在のENNOYにつながるスウェットウェアが存在していたことが分かります。
華やかなコラボレーションというより、ENNOYの初期を知るためのアーカイブ。
ブランドの歴史を遡るなら、非常に興味深い一着です。
サカナクション × ENNOY × スタイリスト私物
2020年頃には、ENNOYの活動はファッションの外側へも広がっていきます。
そのひとつがサカナクションとの企画です。
2020年に発表されたのが、
「スタイリスト私物 と ENNOY と sakanaction #夜を乗りこなすT 『祈りと手洗い』バージョン」。
フロントにはサカナクションが展開していた「#夜を乗りこなす」とENNOYのロゴを刺繍。
背面にはアーティスト・高岡周策による作品「祈りと手洗い」がプリントされ、左袖にはこのアイテム専用のピスネームまで付けられています。
さらにボディには、UKラインのRussell Athleticを採用。
サカナクション公式オンラインストア限定で抽選販売されました。
2020年という発売時期を考えると、「祈りと手洗い」という言葉にも当時ならではの意味があります。
単なるバンドTシャツではなく、音楽、アート、ファッション、そしてその時代の空気までひとつのTシャツに閉じ込めたようなアイテムです。
ENNOYが単なる服ブランドではなく、さまざまなカルチャーと交わる存在になっていくことを感じさせるモデルでもあります。


同色反転右胸刺繍Tシャツ
サカナクションとの企画から間もない2020年8月に登場したのが、「同色反転右胸刺繍Tシャツ」です。
コラボレーションではありませんが、ENNOYの“珍品”というテーマでは外しにくい一着です。
通常は左胸に配置される「The Ennoy Professional」のロゴを、あえて右胸へ移動。
さらに文字そのものを左右反転させた鏡文字にし、刺繍糸までボディと同色にしています。
左袖に付けられたネームタグも裏使いという徹底ぶりです。
ボディには当時ENNOYで使用されていたAlstyle製のTシャツを採用。既存ボディの着丈を調整し、ENNOY独自のバランスに仕上げられていました。
価格は7,500円+税で、抽選販売が行われました。
このデザインが生まれた理由も面白く、山本康一郎氏による「あまり目立たなくても良い」という趣旨のリクエストから制作されたことが紹介されていました。
ロゴを大きくしたり目立たせたりするのではなく、わざわざ見えにくくする。
今振り返ってもENNOYらしいユーモアが詰まった一着です。
週刊文春 × ENNOY × スタイリスト私物「文春リークス」
2021年3月には、さらに意外な相手との企画が登場します。
週刊文春です。
ENNOYとスタイリスト私物、そして週刊文春という3者によって作られたスウェットには、「文春リークス」と「文春オンライン」の2パターンが用意されました。
文春リークスはグレーとブラック。
胸には「文春リークス」とENNOYの文字が入り、左袖には「2021」と文藝春秋のロゴワッペンを配置。
一方の文春オンラインはグレーをベースに複数のカラフルな刺繍を入れた、より目立つ仕様でした。
ボディには綿とポリエステルの混紡による柔らかな裏起毛素材を使用したENNOYオリジナルボディが採用されています。
価格は文春リークスが17,000円+税、文春オンラインが24,000円+税。
2021年3月16日から数量限定で受注販売されました。
「文春リークス」という言葉を胸に刺繍したスウェット。
普通ならファッションとは結びつきそうにありません。
しかし、サカナクションとの企画ですでにファッション以外のカルチャーへ領域を広げていたENNOYが、今度は出版社まで取り込んだと考えると、この流れも少し見えやすくなります。
ENNOYの企画力とユーモアを象徴する一着です。
KPM Berlin × ENNOY × スタイリスト私物
文春とのコラボレーションから約1年。
2022年には、さらに予想外の相手が登場します。
KPM Berlin(ベルリン王立磁器製陶所)です。
KPM Berlinは1763年に設立されたドイツの老舗磁器製陶所。
2022年、スタイリスト私物がKPM Berlinへ別注したホッキョクグマ「クヌート」の磁器製オブジェとともに、ENNOYのクルーネックスウェットとフーディーが制作されました。
山本康一郎氏が実際に所有していたKPM Berlin製のクヌートをもとに、通常の絵付けをなくして白磁そのものを生かした特別仕様へ変更。
「simple is deep.」というコンセプトのもと展開されています。
ENNOYのウェアにもこの企画ならではの要素が盛り込まれています。
「The Ennoy Professional」の頭文字から作られた「tep berlin」のロゴ、KPM Berlinのロゴ、そしてドイツ・ハンブルクを拠点に活動するStefan Marxによるビジュアルを刺繍。
クルーネックはASH WHITEで25,300円、フーディーはBLACKで27,500円。
三越伊勢丹によれば、ASH WHITEはENNOYで初めて使用されたカラーでした。
週刊文春の次が、250年以上の歴史を持つドイツの磁器製陶所。
普通のファッションブランドではまず考えにくい展開ですが、ここまで時系列で見てくると、「意外なものをENNOYの世界へ持ってくる」というブランドの面白さがよりはっきりしてきます。


DAIWA PIER39 × ENNOY × スタイリスト私物 × Stefan Marx
2023年には、DAIWA PIER39との大型企画が登場します。
ここでは、KPM Berlinの企画にも参加していたアーティストStefan Marxが再び加わりました。
展開されたのは、
・GORE-TEX Tech Tactical Jacket by Stefan Marx
・Tech Flex Jersey Crew by Stefan Marx
・Tech Flex Jersey Pants by Stefan Marx
・Tech Drawstring Tee by Stefan Marx
の4型です。
特にインパクトが大きかったのがGORE-TEXを使用したタクティカルジャケット。
多数のポケットを配置したテクニカルなデザインに加え、両脇のジップはベンチレーションとしても機能します。
そしてStefan Marxによる飛行機やスーツケースなど、旅を連想させるグラフィックをプラス。
それまでENNOYが得意としてきたベーシックな日常着とは明らかに異なる、非常に作り込まれたプロダクトでした。
一方でクルーやパンツ、Tシャツも展開されており、ENNOYらしい日常着の要素もしっかり残されています。
初期には既製品のボディを巧みに使っていたENNOYが、ここまで本格的な機能服を作るようになったという意味でも興味深い企画です。
Netflix × ENNOY × スタイリスト私物
そして2024年に登場したのが、Netflixとのコラボレーションです。
「Netflix ENNOY stylistshibutsu HOODIE+PANTS」として展開されたのは、フーディーとスウェットパンツのセットアップ。
コットン62%・ポリエステル38%の軽く柔らかなENNOYオリジナルボディを使用し、ブラックの生地にNetflixを象徴するレッドでロゴ刺繍を施しています。
フーディーは身幅を広く取ったセットインスリーブ仕様。
パンツには右ポケット内側の隠しポケットや、キーホルダーなどを取り付けられるループも設けられました。
SからXXLまでの5サイズ展開で、上下セット価格は49,500円。
ここまで紹介してきたENNOYのアーカイブを知っていると、Netflixとの組み合わせも単なる話題性だけのコラボには見えなくなってきます。
サカナクション、週刊文春、KPM Berlinと、ジャンルを問わず面白い相手をENNOYのプロダクトへ落とし込んできた流れの先にある企画だからです。
しかも完成した服は極めてシンプル。
ブラックのスウェットに赤いNetflixロゴとENNOYの刺繍。
世界的な動画配信サービスとのコラボレーションでありながら、企業ノベルティのようには見えず、きちんとENNOYの服として成立しています。
これまで培ってきたENNOYの「普通の服に少しだけ違和感を加える」という感覚が、非常に分かりやすく表れた一着ではないでしょうか。
まとめ
今回紹介した8つを改めて時系列で並べてみると、ENNOYの変化が見えてきます。
2019年頃のis-nessとのスウェットや、TRI-MOUNTAINのような既製ボディを使用していた初期。
2020年にはサカナクションとの企画や、ロゴそのものを反転させたTシャツが登場。
2021年には週刊文春、2022年にはKPM Berlinと、ファッションとは距離のある相手との企画が続きます。
さらに2023年にはDAIWA PIER39と本格的な機能服を制作し、2024年にはNetflixとのセットアップまで登場しました。
こうして見ると、単に人気ブランドとのコラボレーションを繰り返してきたわけではないことが分かります。
出版社、磁器製陶所、ミュージシャン、動画配信サービス。
組む相手に分かりやすい共通点はありません。
それでも完成したプロダクトには、どこか共通したENNOYらしさがあります。
ベースとなる服は極力シンプルにする。
そこへロゴや刺繍、企画背景といった「少しだけ変な要素」を加える。
一見すると普通なのに、背景を知ると途端に面白くなる。
これこそ、ENNOYの珍品を掘る醍醐味ではないでしょうか。
現在のENNOYしか知らない人も、ぜひ過去のモデルまで遡ってみてください。
現在の完成されたプロダクトとはまた違った、ENNOYの試行錯誤やユーモアを感じられるはずです。



