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服好きの独り言

【完全ガイド】バトナー(BATONER)とは?ブランドの魅力と定番ニットを解説。

日本のニット産業を語るうえで欠かせない土地、それが山形県。

その中でも寒河江市に拠点を置く老舗ファクトリー「奥山メリヤス」が、長年の経験と技術を活かして立ち上げた自社ブランドこそATONER(バトナー)です。

1951年創業の奥山メリヤスは、これまで国内外の有名ブランドのニット製品をOEMで生産してきた実績を持ちます。

その技術力を自らの名のもとに発信したいといった思いから、2013年にBATONERが誕生しました。

ブランド名の由来は、「バトンを継ぐ者(Batoner)」という言葉。

先人たちが築いてきた技術を受け継ぎ、次の時代へと繋いでいく意思を示しています。

日本のクラフトマンシップを体現するブランドとして、国内外で高く評価されています。

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産地としての強み

山形県は戦後からニット産業が盛んな地域で、寒暖差と湿度の安定した気候がニット製造に適していると言われています。

染色・紡績・編み立て・仕上げといった工程が比較的近距離に集積しているため、工程間の連携が取りやすく、品質の高い製品を安定的に生み出せる土壌があります。

奥山メリヤス(BATONERの母体工場)はその中核的存在のひとつであり、原料調達から編み立て・仕上げ・検品までを一貫して自社管理のもとで行う体制を整えています。

技術と工程で差をつける品質

BATONERの最大の特徴は、やはりその品質にあると言われています。

  • 編み立て(Knitting):糸の撚りやテンションを細かく調整し、立体的なフォルムを形成。
  • リンキング(Linking):各パーツを職人が手作業で繋ぎ合わせ、縫い目がほとんど目立たないよう仕上げる。
  • プレス(Pressing):湿熱処理を行い、形状を安定させることで着用後の型崩れを防ぐ。
  • 検品(Checking):すべての製品を人の目で確認し、寸法・編み目の不整・糸の処理を厳密に管理。

上記を徹底管理することで、他とは異なるクオリティの高い製品を生産し続けています。

また、素材面でも高品質な天然繊維を厳選しており、ウールやカシミヤ、モヘア、コットンなどを中心に、肌触りの良さと耐久性を両立

この結果、「ウールなのにチクチクしない」「毛玉ができにくい」「型崩れしない」という評価が多く見られます。

見た目の美しさだけでなく、着心地や耐久性までも計算されたBATONERのニットは、「一度袖を通すと違いがわかる」と評されるほどです。

定番アイテム

BATONERのラインナップはシンプルですが、どのアイテムにも魅力が詰まっています。

とくに以下のアイテムは、ブランドの代表作として毎シーズン高い人気を誇ります。

シグネチャーシリーズ(Signature)

Signature Drivers Knit

文字通り、ブランドの象徴的存在で、ウールのモデルとコットンのモデル両方存在します。

美しい畦編みとふっくらした立体感が特徴で、毛玉になりにくく耐久性にも優れています。

白シャツやデニムと合わせるだけで完成する万能ニットであり、とにかく使い勝手が抜群。

私も購入してからずっと活躍している一軍アイテムです。

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シグネチャーシリーズはクルーネックやジップ付きニット(いわゆるドライバーズニット)が定番です。

バトナーを知るならまずはここからでしょう。

ラミーウール(Ramie Wool)

Ramie Wool Crew Neck

ウールとラミー(麻)をブレンドした素材。

通気性と保温性を兼ね備え、春から秋まで長く使える一枚です。

その素材ゆえ、非常に軽やかでありながらも高級感が漂います。

ずっしりとしたウール100%のアイテムとはまた違った魅力があるシリーズです。

ユーティリティウール(Utility Wool)

utility wool swing top shirt batoner

Utility Wool Swing Top Shirt

SUPER160’sクラスの極細メリノを高密度の平織りで仕立てたオリジナル生地です。

いわゆるトロピカルウールですね。
※トロピカルウールと名の付くアイテムも別途あります。

シャツやライトアウター等に用いられる素材で、薄く軽いのにハリ・コシがあり、上品な光沢とドレープが出るのが特徴です。

毛羽をそいだ仕上げで見た目もクリーン、シワになりにくく、吸湿性・防臭性にも優れるため、暑い時期から一年を通じて快適に着られる素材です。

シーアイランドコットン(THE SEAISLAND COTTON)

batoner seaisland cotton Crew Neck

The Seaisland Cotton Crew Neck

春夏ラインで展開されているシーアイランドコットンシリーズ。

BATONER が採用する最高品質綿素材を活かしたアイテムで、通気性・光沢・滑らかな肌触りを兼ね備えています

糸・編み地ともに目の詰まったハイゲージ仕様とされ、ドライタッチな感触が高温多湿な日本の気候と相性が良いと言われています。

ただ柔らかいだけでなく、「糸に適度な撚りを加える」加工を施すことで、シーアイランドコットン本来の上品な光沢と滑り感を残しつつも、べたつきを抑えた風合いに仕上げられています。

32Gスムースウール(Smooth Wool)

32G SMOOTH WOOL CLASSIC CREW NECK

32G Smooth Wool Classic Crew Neck

極細ウール糸を32ゲージという超ハイゲージで編み立てたシリーズ。

薄く軽いのに、ハイゲージ特有の“へたりやすさ・シワになりやすさ”を克服する設計で、表面は非常に滑らか、上品な光沢とドレープが出ます。

他の編機で再現できない繊細なプロセスゆえ1日の生産枚数が限られるとも説明されており、見た目の繊細さと実用性を両立したロングシーズン対応の定番です。

ベビーウール(Baby Wool)

BABY WOOL CREW NECK 

Baby Wool Crew Neck 

BATONERが展開するウール素材の中でも特に柔らかく、肌触りのよさを追求した高級ラインです。

使用されているのは14マイクロンという非常に細い繊維径のウールで、これは一般的なウールよりも格段に細かく、ベビーカシミヤに匹敵するほどの滑らかさと光沢を持ちます。

チクつきが少ない快適な着心地で、クルー/V/タートルなど多型で展開されています。

秋冬シーズンのインナーとしても、薄手なので春先の一枚着としても活躍します。

その他

上記は代表的なもののみ紹介していますが、とにかく素材やデザイン、柄が多種多様で色々なアイテムがリリースされています。

シンプルなものが代表的とはいえ、面白いアイテムも多々あるのが魅力的です。

別注も多いですね。

サイズ感

BATONERは、1・2・3といったナンバリングサイズで展開されることが多く、一般的には「1=S相当」「2=M相当」「3=L相当」と考えるのが目安です。

  • 標準体型の方は「2」で自然なフィット感。
  • ゆったり着たい方やシャツを中に重ねたい方は「3」。
  • 細身や女性の方は「1」がおすすめです。

全体的にリラックスした設計ながら、野暮ったく見えないのがBATONERの特徴。

計算された編みテンションによって、身体のラインを自然に包み込みます。

ただしバトナーの場合、シグネチャーシリーズに使われているような固いしっかりとしたウールから、超ハイゲージの柔らかいウールまで多岐にわたるので、アイテムによって好みのサイズ感は異なるかもしれません。

「〇〇はサイズ2で良かったから××も同じサイズで」というよりは、やはり各アイテム試着するのが望ましいと考えます。

また、当然ながら「インナー使いをするのか、インナーに着込むのか」によっても異なるでしょう。

ジャケットのインナーで使うようであればジャスト~タイト目を選ぶべきでしょうし、あるいは着ぶくれするのが嫌だという人はやや大きめを買うのが正解です。

バトナーのアイテムは1枚でもインナーでも活躍してくれるので、ある意味この点も悩ましいところではありますね。

同じ山形発の兄弟的存在「Yonetomi(ヨネトミ)」との関係性

ちょと余談です。

BATONERと並んで山形ニットの代表格として知られているブランドがもう一つあり、それがYonetomi(米富繊維)です。

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こちらは1952年創業の老舗メーカーで、山形県山辺町を拠点に活動しています。

Yonetomiは長年、国内外ブランドのOEM/ODMを手掛けてきたニットファクトリーであり、自社ブランド「Yonetomi」や、よりデザイン性に富んだレーベル「COOHEM(コーヘン)」なども展開しています。

コーヘンはそのデザイン性の高さから、よくテレビ衣装で見かけることがあります。

両ブランドの関係は「直接的な提携」こそないものの、共通する背景がいくつも存在します。

  • 山形という同じニット産地に根差し、職人技を基盤にブランドを展開していること。
  • 工場を母体とした“ファクトリーブランド”であること。
  • 国内外のハイブランド製品を手掛けた経験を背景に、高い品質基準を維持していること。

一方で、アプローチには違いがあります。

  • BATONER:素材の良さを最大限に引き出すシンプルなデザイン。長く着られる定番型かつ無地が中心
  • Yonetomi/COOHEM:異素材の交編や色糸使いなど、テキスタイル開発と表現力の幅が広い。技術的挑戦を重視。

つまり、両者は競合というよりも、同じ山形ニット文化を支える“二つの方向性” と言えます。

BATONERが“日常に馴染む上質な定番”を象徴するのに対し、Yonetomiは“技術と創造性で魅せる革新的なニット”を体現しています。

入手方法と価格帯の目安

BATONERは公式オンラインストアのほか、BEAMS、ARKnets、LOFTMAN、伊勢丹メンズ館など多くのセレクトショップで取り扱いがあります。

シーズン終盤にはセールになることもあり、購入タイミングを見計らうのもおすすめです。

価格帯の目安としては、シグネチャーシリーズで3万円台といったところ。

そのほかのニットアイテムもおおむね2~3万円台であり、昨今の値上がりを考えると個人的には妥当な価格だと思います。

また、いずれもすべて日本製で、職人による一貫生産。

同品質のドメスティックブランド・インポートブランドと比較すると、コストパフォーマンスは高い水準にあるのではないでしょうか。

こんな人におすすめ

個人的には万人に勧められるアイテムが揃いますが、中でも以下のような人には特におすすめできると思います。

  • 派手さよりも“質の良さ”を重視する方
  • 長く着られる定番アイテムを探している方
  • 日本ブランドのクラフトマンシップを支持する方
  • シンプルで汎用性の高いニットを求める方

また、質は良いとは言っても、あくまでニットアイテム。

天然素材ゆえに扱いはデリケートに行う必要があります。

手洗いであったり、ドライクリーニングであったり、ブラッシングであったり、そういった細かなケアを怠ってしまうと、毛玉やダメージの原因となってしまうので注意が必要です。

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まとめ

BATONERは、山形・寒河江の地に根ざした確かな技術と、現代的なデザイン感覚を融合させた希少なファクトリーブランドです。

1951年創業の奥山メリヤスが培ってきた編み・仕上げ・品質管理のノウハウを活かし、「永く愛用できる一着」を丁寧に生み出しています。

素材ごとに表情が異なるのもバトナーの魅力で、シグネチャーシリーズの重厚な畦編み、トロピカルウールの軽やかさ、シーアイランドコットンの上品な光沢、32Gスムースウールの繊細さ、ベビーウールの極上の肌触り——いずれも“質の良さ”を肌で感じられる完成度です。

派手な装飾やトレンドに頼らず、素材と技術で勝負する。

そんな姿勢こそが、BATONERが多くのファッション愛好家に支持され続ける理由と言えるでしょう。

日常に寄り添いながら、長く信頼できる「定番」を探している方にこそ、ぜひ手に取ってほしいブランドです。

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